パワハラ防止の指針 わかりやすく「ハラスメント2020」を作成

1月15日に厚生労働省から「女性活躍・ハラスメント規制法」の指針が公表されました。昨年11月に、パブリックコメントを募集した「指針(案)」から全く変更はありません。 指針は官報のHPから見ることができます。

アトリエエムは、半年前に法律が制定された時に、それらのポイントをわかりやすくまとめた「ハラスメントノート」を作成して、HPにもアップしていました。

このたびの指針を受けて、それを改訂して「ハラスメント規制法 ハラスメント2020 ~法律と指針の概要とポイント~」(ハラスメント2020)として、わかりやすく作成しなおしました。

下記からダウンロードできますし、ホームページにもアップしています。

今年6月からは法律が施行されます。

職場のハラスメント防止の取り組みを進めるにあたり、ぜひご活用ください。

「ハラスメント2020」(約2M)はこちら>>>

官報のHPはこちら>>>

今年は「職場環境改革」の年に

新年明けましておめでとうございます。

今年6月1日からは大企業に、中小企業には2022年4月1日から「女性活躍・ハラスメント規制法」が施行されます。

一方、昨年末に発表された「ジェンダーギャップ指数」では、日本は153か国中121位でした。
職場ではアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を払拭して、男女格差をなくすことが益々求められます。

アトリエエムは、今年設立15年を迎えました。
ハラスメントのない職場環境の改革をめざして、より一層頑張ります。

本年もよろしくお願いいたします。

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昨年も新旧多くの良い映画と出会うことができました。
特に印象に残ったのは下記です。

「主戦場」
監督:ミキ・デザキ/アメリカ/2019年
「存在のない子どもたち」
監督:ナディーン・ラバキー/レバノン/2018年
「第三婦人と髪飾り」
監督:アッシュ・メイフェア/ベトナム/2018年
「i新聞記者ドキュメント」
監督:森達也/日本/2019年
「家族を想うとき」
監督:ケン・ローチ/イギリス・フランス・ベルギー/2019年

今年の言葉は「they」 一方、日本では…

アメリカの辞書出版社メリアム・ウェブスター(Merriam-Webster)が選んだ今年の言葉は、「they」という代名詞でした。英語を話すときに、出生時の性別に関係なく自認する性別を表す代名詞を選ぶ権利を行使する人が増えていて、「she」や「he」の代わりに「they」などが使われています。複数形だけではなく単数形でも使いますが、動詞はareなど複数形のままです。

一方日本では、トランスジェンダーの女性が、女性として生き、女性トイレの自由な使用を求めて、職場の経済産業省を訴えていた裁判の判決が12月12日にありました。
東京地裁は「日本でも、トランスジェンダーがトイレ利用で大きな困難を抱えており、働きやすい職場環境を整えることの重要性が強く意識されている」「国民の意識や社会の変化に照らせば、自ら認識する性別に即して生活する重要な法的利益の制約は正当化できない」として、国に132万円の賠償を命じました。

経産省側が、トイレを自由に使うためには性同一性障害であると他の女性職員に説明することが条件だとした(カミングアウトを強制した)ことは、「裁量権の濫用であり、違法」との判断を示しました。
さらに原告の上司から「もう男に戻ってはどうか」などと言われたことについても「性自認を正面から否定するもので、法的に許される限度を超えている」として違法だとの判決を下しました。

原告の女性は男性として生まれましたが、健康上の理由で性別適合手術を受けておらず、そのため戸籍は男性となっています。しかし女性は性同一性障害との診断を受け、女性ホルモンを投与して女性として生活しています。

原告の女性は、判決後の記者会見で「トランスジェンダーにもさまざまな人がいる。大切なのは人権を重視した対応。他の女性と同じように扱ってほしい」「多くの職場で(改善に向け)前向きに取り組んでほしいです」と語りました。
原告側弁護団の山下敏雅弁護士によると、性的マイノリティの職場環境改善をめぐって下された初の司法判断だそうです。

経産省には、速やかに職場環境の改善に努めてほしいと思います。

その後、原告、被告の双方が控訴しました。
原告の女性は、トイレの使用制限だけでなく、性別適合手術を受けるまで異動がなかったり、他の女性職員と同じ時間に健康診断を受けられなかったりと違法な処遇があったと訴えていましたが、認められなかったためです。

パワハラ防止指針
労政審で決定

パワハラ防止の指針が厚労省の労政審(労働政策審議会)で決定されました。
このブログでもお伝えしていましたが、パブコメの募集期間-12月20日までの1か月の間に寄せられた意見は、1,139件。

寄せられたコメントのほとんどは、指針に否定的で修正を求めるものでした。
私も「パワハラに該当しない例を全て削除すること」「フリーランスや就職活動中の学生に対するセクハラの防止も事業主の措置義務とすること」などのコメントを送りました。

しかしながら、指針(案)から全く修正されることなく労政審で指針が決定しました。
厚労省に確認すると、今後この労政審の決定を尊重して、1月中旬に正式に指針を発表するとのこと。

しかしこの指針で本当にハラスメントの防止につながるのか、はなはだ疑問です。もちろん何ら規制がなかったことから考えると、一歩、いえ半歩前進とはいえるでしょうが。

トヨタ自動車でも三菱電機グループでも、電通でも変わらずパワハラ、長時間労働が続いています。これらの企業でも社内のハラスメントのガイドライン(防止指針)があることでしょう。しかし悲劇は一向になくなってはいません。

各企業では、厚労省の指針を上回るより本当に実効性の高いガイドラインを作ることが必要です。
大企業は、6月1日から法律が施行されます。この機会にぜひ見直しをしてほしいと思います。

指針の詳細(第24回労働政策審議会雇用環境・均等分科会の資料)はこちら>>>

伊藤詩織さんの民事裁判
合意のない性行為と認定

望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之さんに1,100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、12月18日(水)にありました。
東京地裁は、伊藤さんの訴えを認めて山口さんに330万円の支払いを命じました。
また、山口さんは伊藤さんに記者会見や著書等で名誉を傷つけられたとして1億3,000万円を求めて反訴していましたが、名誉棄損には当たらないとして、請求は棄却されました。

伊藤さんが被害を訴えたのとほぼ同じ時期にアメリカで「#Me Too」キャンペーンが始まりました。日本でも財務省のセクハラ問題が発覚しました。今春の性暴力に対する無罪判決が4件相次いだことから「フラワーデモ」が毎月11日に開かれるようになり、12月には全国で30か所に達しました。

性被害を訴えるのは心身共に本当に大きな負担が伴います。公表と同時にネットやあらゆる手段でのバッシングやセカンドハラスメントを受けることがほとんどです。伊藤さんもひどいバッシングを受けて、日本での活動を一時断念せざるを得ませんでした。

この判決を機に、法律、報道のあり方、教育等を変えていくことが大切だと思います。

先日、伊藤詩織さんと「#Ku Too」運動を展開しているグラビア俳優の石川優実さんの対談のイベントに参加しました。二人は「ハラスメントを見聞きしたときには、傍観者にならず介入しようとすることが大事」「暖かい声を広げることが大切」と、穏やかに話されていました。まさにその通りだと思います。被害者へのバッシングやセカンドハラスメントは、加害者に加担することにほかならないと思います。

121位-ジェンダーギャップ指数
日本の「男尊女卑」の風潮は変わらず!?

スイスの国際機関「世界経済フォーラム」が各国の男女格差について調査をした結果を発表しました。
日本は153か国中、121位!
これは過去最低の順位です。G7での最下位は毎年のこと、昨年の110位よりも11位順位を下げました。
指数は政治、経済、教育、健康の4つの分野で女性の地位を分析し、総合順位を決めていますが、日本は特に政治と経済分野での男女格差が大きいのです。

政治は、144位、経済は115位。女性の管理職やリーダーの少なさ、低収入等が響いています。

誰の意識にもあからさまな「女性差別」というものはもしかするとないのかもしれません。
しかしながら「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」というものがまだまだあるのではないでしょうか。
現在、企業に占める女性の割合は、部長級で6.3%、課長級で10.9%です。
10人の男性の中に女性が1人いれば「お人形扱い」、2人いれば「仲たがいさせられる」、3人いて初めて「自分」になれる、という言葉もあります。
3割に達すれば組織は確実に変わっていきます。
セクハラ、マタハラ等の主に女性が被害を受けているハラスメントを防止することにもつながります。

まずは、職場におけるアンコンシャス・バイアスを払拭して、男女格差をなくすことが求められると思います。もちろんこれは、男性だけでなく、女性の意識も変えなくてはならないと思います。

*ジェンダーギャップ指数(The Global Gender Gap Repor)の詳細はこちら>>>

パワハラ防止指針(案)に意見送付を
厚労省がパブコメ募集中

現在、厚生労働省の労働政策審議会で「女性活躍・ハラスメント規制法」の指針が審議されています。

先日指針(案)が公表されました。
それに対するパブコメ(パブリックコメント)を募集しています。
私たち国民の意見を反映させる最後の機会となります。
働いている人にとって、本当により良い指針にするために、多くの人が意見を送ることが大切です。

●期日 2019年11月21日(木)~2019年12月20日(金)
●パワーハラスメント指針(案)についてはこちら>>>
●セクシュアルハラスメント指針(案)、マタニティハラスメント指針(案)等についてはこちら>>>

パワハラ防止 大企業は20年6月1日
中小企業は22年4月1日から義務化

厚生労働省は、10月28日(月)の労働政策審議会で、女性活躍・ハラスメント規制法を施行する日程案を示しました。
パワハラの防止は、大企業で2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から、それぞれ義務化されます。厚労省が今後政令を定める予定です。

現在、労政審ではパワハラに該当する行為の具体例などを盛り込んだ指針を検討しています。
が、10月29日付けのブログでもお伝えしたように、指針素案は非常にひどい内容です。

今後の労政審の動きに、皆で注目していくことが必要です。

ハラスメント防止の指針素案
附帯決議の尊重を!

職場のハラスメント対策の強化を目的として「女性活躍・ハラスメント規制法」が、5月29日に改正・成立しました。
現在、厚生労働省の労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)で指針の内容について審議されています。年末までにはとりまとめて公表される予定です。

が、先日10月21日(月)に厚労省から示された「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」(指針素案)が非常にひどい内容で、とても驚いています。

まず、パワハラの定義をとてもとても狭いものにしています。
またフリーランスや就職活動中の学生へのセクハラは、防止対策を企業の義務とはせず、「必要な注意を払うよう配慮」を求めることにとどめています。
カスタマーハラスメントや性的指向・性自認の望まぬ暴露(アウティング)についても、雇用管理上の取り組みについて言及はしていますが、非常に限定的、わかりにくい内容となっています。

何よりも法改正にあたっては、国会で様々な審議が行われ、衆議院・参議院の両院で附帯決議が付されました。この付帯決議は、与野党一致で決議されたもので、尊重されるべきものです。が、指針素案ではきちんと反映されてはいません。
例えばパワハラの判断に際しては「平均的な労働者の感じ方」を基準としつつ「労働者の主観」にも配慮すること、とされていますが、指針素案では「労働者の主観」は排除されています。

この指針素案では、対象となるパワハラの範囲を非常に狭く捉えて、使用者・労働者双方にとってかえって混乱を招き、パワハラを防止する実効性のあるものには全くなってはいません。

アトリエエムは、重大な問題のある指針の策定に強く反対し、抜本的な修正を速やかに講じるように求めます。

講義とロールプレイで
より理解を深めたセミナーに

10月18日(金)のアトリエエムのセミナー「法律の改正に向けて~ハラスメントの対応と防止対策~」には、今回も各地から多くの方が参加してくださいました。

まず弁護士の中村衣里さんから今春成立した、パワハラの防止を企業に義務付ける「労働施策総合推進法」等の法律と指針、さらにはILO(国際労働機関)で採択された条約等について、とてもわかりやすく解説していただきました。

午後からは三木から相談対応とロールプレイ、そして行為者ヒアリングの対応とロールプレイ、さらに防止対策等について具体的にお伝えしました。
随時参加者から質問も活発に出されて、とても実践的なセミナーとなりました。

<参加者のアンケートの一部をご紹介します>
◆パワハラ防止の法律ができたとはいえ、1つの法律ではないのでわかりにくかったのですが、中村さんがポイントを絞って解説してくださったので、かなり理解できました。
◆法律の改正の講義は、法的な側面から意義あるものでした。法務部の大切さを痛感しました。
◆事例、裁判例、ロールプレイ等で理解を深めることができました。
◆相談員という立場(役割)を与えられて2年半ほど経ちますが、相談員としての能力向上(スキルアップ)の機会は初めてでした。非常に有意義で、明日から実践しようと思います。
◆従業員の少ない会社であまり「ハラスメント」が表立ってなかったのですが、最近あった事例の際に対応に困りました。やはりこのようなセミナーを受けて、組織としての準備対応マニュアルが必要であると感じました。
◆ハラスメントの相談を受ける側としてどう対応するのか、ポイントがわかりやすく学べた。
◆気づかされることが多かった。行為者へのヒアリングが難しかった。いずれにしても、傷つく誰かがいる。ハラスメントが起こらない環境づくりが1番大切と思った。

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今後もあらゆるハラスメントの防止にしっかりと取り組んでいきたいと思います。