教育機関(大学・小中高校等)からのハラスメントセミナーの依頼が増えています。
全国各地で、教員の処分が連日のように報道されています。教員間のハラスメントももちろん大きな問題ですが、より深刻なのが、教員から学生・生徒・児童へのハラスメント-セクハラ、アカハラです。
「『「イヤだったら、イヤと言っていいよ』」と言ったけれど、「『イヤ』」だと言わなかったから不快に感じているとは思わなかった。コミュニケーションのつもりだった」と泰然と言う教員。そもそも、生徒達が教員に対して、不快だという意思表示ができるわけがない、と思うべきです。圧倒的な「力」の差があるのですから。またそのようにことわらなければならない言動自体が「コミュニケーション」とは言えるものではない、ということも認識する必要があります。教員は、自分の「力」にあまりにも無自覚であると言えます。
大学や教育委員会は、教員に対して、パンフレットを配布して終わり、ではなく今こそハラスメント防止に対してしっかりと取り組むことが必要です。まずは、実効的なハラスメント防止セミナー(研修)に全教員が参加することから始まります。ハラスメントに対して認識の甘い教員ほど、「自分は大丈夫」とたかをくくってセミナーには参加しないのですから。
先日11月18日(金)には、静岡県で全県立高校のハラスメント相談員(教員)を対象にしたセミナーをロールプレイも交えて行いました。その模様が、新聞やテレビなどで報じられています。
11月19日(土)の静岡新聞はこちら>>>
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「モンスター上司」
「パワハラ、セクハラ、バカハラ~立ち上がれ、世界中の部下よ!~」のチラシの言葉に誘われてアメリカ映画「モンスター上司」(監督/セス・ゴードン)を観に行きました。
本来ならそんなひどい上司にはさっさと見切りをつけて、転職をしたい3人でしたが、リーマンショックで不景気な世の中、転職もままならずやむを得ず見つけた解決策は、上司を抹殺してしまうこと。
あまにりもドタバタコメディすぎてちょっと残念、というのが正直な感想です。
もう一つのアメリカ映画は「ウィンターズ・ボーン(WINTER’S BONE)」(監督/デブラ・グラニック)。
ミズーリ州の田舎で暮らす17歳の少女・リーの生活とあり様が、丁寧に描かれていてとても良かった。
幼い弟と妹、病気の母との貧しい貧しい生活。村には仕事もなく、お金を得るためにやむなく軍隊に入ろうとさえ考えるリー。
どちらの映画にも共通しているのが、ドラッグ、暴力、銃、そしてハラスメントが生活のごく身近にあるということ。
一部の富める人と大勢の貧しい人々の生活。
アメリカの現状が描かれているのだと思いました。
青鞜から100年、世界で98位
「原始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。」と平塚らいてう(らいちょう)が「青鞜(せいとう)」を創刊したのが100年前の1911年9月。
リバティおおさか(大阪人権博物館)で開催されている「モダンガールズ 青鞜の時代」展を私が訪れたのは10月30日、大阪マラソンの日でした。
沿道では大勢の人がランナーに声援を送っていましたが、それにひきかえ青鞜展の会場はひっそりとしていたのが、とても残念でした。
自分の意見を言う、という基本的な「人」としての権利が女性には全く認められていなかった時代に、自分の意見をしっかりと主張し、母性保護や経済的自立について論争をした平塚らいてうや与謝野晶子、山川菊栄たち。
その論争が全く色褪せることがないほど、100年経っても日本の社会は変わっていないように思います。
法的には整備されてきた部分もありますが、実際には多くの女性たちが仕事と育児のはざ間で悩み、ハラスメントやDVで苦しんでいます。
11月1日に世界経済フォーラムが発表した「男女格差報告」では、日本は135カ国中、98位、昨年よりもさらに悪くなっているというお粗末な現状。
女性、男性という性別で分けるのではなく、誰もが「人」としての権利が守られる社会であるべきだと思うのです。
「同僚とのトラブル」は心理的負荷の強度が「中」に
厚生労働省では1年間にわたって「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催してきました。10月21日(金)の第10回検討会では、発症のきっかけとなった具体的な事例を盛り込んで、基準を明確化するように求める報告書をまとめました。今年度内に新基準を実施する方針です。
ハラスメントに関する項目では、「対人関係のトラブル」の類型の中で「同僚とのトラブルがあった」が心理的負荷の強度が「弱」から「中」に引き上げられました。
また、セクシュアルハラスメントは、「対人関係のトラブル」から独立した項目として、段階ごとに負荷の内容を例示しています。
内容的にはまだまだ不十分な部分が数多くありますが、労災認定の審査期間を短縮するなども含めて、若干の改善ではあるかとも思います。
さらに、長時間労働について初めて具体的な時間数を示しています。1か月に80時間以上の時間外労働は心理的負荷を「中」、160時間以上を「強」とするなどです。
そもそも4週間の法定労働時間が概ね160時間ですから、それに加えて160時間の時間外労働など、決してあってはならない数字とも言えます。長時間労働の背景には、必ずと言っていいほど、パワハラも存在しているのです。
またここでしっかりと考えておかなければならないのが、いずれもうつ病などの「精神障害」を発病したことに対しての基準だということです。
どの職場においても、誰もが健康に働くためには、まずはハラスメントのない職場環境が重要である、というのは言うまでもありません。
そのためには、従業員に対するハラスメント防止セミナー(研修)が必要なのです。
ハラスメントについては、アトリエエムにお気軽にご相談ください。
ハラスメント防止セミナー(団体研修)はこちら>>>
「三木啓子のハラスメント相談員セミナーvol.5」はこちら>>>
厚生労働省の専門検討会の報告書はこちら>>>
「国によるハラスメント」 強制隔離・強制堕胎
玉城しげさんのお話しを、兵庫県の尼崎市内でお聴きしました。
玉城さんは93歳、ハンセン病の元患者で、鹿児島県の国立療養所星塚敬愛園で暮らしています。
20歳の時に突然、療養所に強制的に隔離されました。
そこは、療養所とは名ばかりで、玉城さんたちは「座敷豚」と呼ばれ、ほとんど治療も受けることなく重労働を強いられ、病状はますます悪化。
しきりもカーテンも何もない12畳の部屋で、夫婦4組が共に暮らす異様な生活。
子どもを産むことは許されず、男性は断種手術、女性は強制堕胎。
療養所での生活は信じられないような、本当に酷い非人間的なものでした。
玉城さんは、妊娠7か月で強制堕胎をさせられました。数日後対面した我が子は、瓶の中でホルマリンに漬けられていたのです。
車椅子から立ち上がり、振り絞るように話される玉城さんの声には、怒りと悲しみが込められていました。
こんな酷いことが、国の政策として合法的に歴然と行われてきていたのです。まさに「国によるハラスメント」ともいえるでしょう。
治療ではなく、「終生絶対隔離(絶滅政策)」という政策の根拠となる「らい予防法」が廃止されたのは、わずか数年前、1996年のことです。
法律の廃止後も、差別や偏見によって、元患者の方たちは様々な迫害を受けています。
差別や偏見を生み出してきた根底にあるのが、法律であり、国策だったということを私たちは今こそしっかりと考えなければならないと思います。
決して過去の話ではないのです。
「いじめの円卓会議」実効的な提言を
昨年度、全国の労働局には4万件もの「職場でのいじめや嫌がらせ、パワハラ」の相談が寄せられました。相談件数の増加やパワハラに対する社会的な関心の高まりを受けて、厚生労働省では、専門家による「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を7月8日(金)に立ち上げました。まずは、いじめの実態把握と定義を定めることを目的として、提言をまとめる予定です。
「円卓会議」の下に「ワーキング・グループ」を設置して、提言に向けた論点整理など、必要な作業を行うことになりました。1回目の会議が開かれたのは、円卓会議直後の7月11日(月)でした。
ワーキング・グループの会議は、一部の資料は開示されていますが、傍聴ができない「非公開」となっています。例えば、被害者のプライバシーに関することなどが話し合われる場合などには、その時のみ非公開ということも必要だとは思います。
しかしながら、そうでなければこのような会議は原則「公開」とするべきだと思います。
一部の企業の事だけでなく、様々な職場での実態を正しく把握して、しっかりと議論し、実効的な提言がなされることが重要です。
海外では、いじめの国際会議の開催や、フランスやベルギーのように、職場のいじめを規制する法律を制定するなどの取り組みがなされています。日本でも早急に、パワハラ防止の法整備への取り組みを進めなければなりません。
各企業(事業所)では、国の提言を待つまでもなく、セミナー(研修)をしっかりと行い、ガイドラインの制定や相談窓口の整備などの取り組みを迅速に進めていくことが必要でしょう。
上記の会議の議事録等は、厚生労働省のHPにアップされていますが、とてもわかりにくいです。ページへのアクセスは下記のとおりです。
厚生労働省のHP
→「厚生労働省からのご案内」の「政策について」の「審議会・研究会等」
→「上記以外の検討会、研究会等」の「労働基準局」
→1番下の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」並びに「「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」
円卓会議のページはこちら>>>
DVD新発売!「行為者へのヒアリング」
お待たせしました!半年ぶりに新しいDVDをお届けします。
このDVD「解決に向けた相談体制から防止対策まで」では、カウンセリングマインドを持って相談を受けることの重要性や最新の事例・判例、行為者へのヒアリングやガイドライン作成等について丁寧に解説しています。
また、社会的勢力を背景としたハラスメントの問題性や、学習性無力感を伴う相談者の心理などについてもお伝えしています。
相談の受け方、行為者へのヒアリング、メンタルヘルス、最新の判例などについて丁寧に解説している「三木啓子のハラスメント相談員セミナー」は毎回とても好評です。
それらのセミナーを収録、パワーポイントの資料も挿入してわかりやすく編集したものです。
今回はハラスメントシリーズの第4作目。4作のDVDにはそれぞれ特徴があります。
管理職、相談員、従業員のハラスメント研修など、ニーズに応じて活用ください。
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最新作!vol.4 行為者へのヒアリング
「解決に向けた相談体制から防止対策まで」
vol.3-ガイドラインの作成
「適切な相談対応から防止対策まで」
vol.2-メンタルヘルス対応
「相談員に求められるメンタルヘルスの知識と相談対応」
vol.1-ハラスメントの基礎から
「企業の緊急課題であるパワハラ・セクハラへの対応」
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「三木啓子のハラスメント相談員セミナー」DVDのチラシはこちら>>
DVDの詳細はこちら>>
HPのサンプル映像もぜひご覧ください。
「行為者への処分は無効」という判決
ハラスメントの行為者の処分に関して、大変重要な判決が出されました。
1つ目は京都市に対する判決です。
複数の女性職員へのセクハラ発言やタクシーチケットの不正流用などがあったとして、京都市は男性職員を懲戒免職としました。
ところが、男性職員がこの処分を不服として京都市に対して、処分取り消しを求めて提訴。一審の京都地裁は、処分は妥当との判決。
男性職員は不服として控訴、二審の大阪高裁は、懲戒免職は重すぎるとして、処分を取り消す判決を出しました。(大阪高裁/2010年8月26日)(京都市が上告)
2つ目は京都教育大学に対する判決です。
女子学生に対して、集団での性的暴行があったとして、京都教育大学は6人の男子学生を無期停学の処分としました。
このうち、4人の男子学生が、この処分を不服として大学に対して、処分取り消しを求めて提訴、京都地裁は、処分は無効との判決を出しました。(京都地裁/2011年7月15日)(京都教育大学が控訴)
私は、どちらも納得のいかない判決であると思います。
しかし、ここで大事な点は、どちらの判決も行為者に十分な弁明の機会が与えられなかった、と判断している点です。
ハラスメントの対応においては、行為者へのヒアリングや処分を決定するときのプロセスが大変重要であるということです。
ハラスメントが起こったとき一番大切なことは、まずは被害者の心身の保護です。
加えて、行為者への対応も非常に重要となります。
被害者をサポートしている人とは、別の人が行為者を担当することが必要です。
ハラスメントへの対応は、迅速さが重要ですが、行為者と被害者の主張は食い違うことも多く、ヒアリングでは慎重な対応が要求されます。
適切に対応できる体制を日頃から整備しておくことが重要だといえるでしょう。
ハラスメントへの対応は、想像以上に多大な労力を要します。
だからこそ、一番大切なのが、日頃からハラスメントを起こさせない「防止」に努めることは言うまでもありません。
ハラスメント防止セミナー(団体研修)はこちら>>>
1月27日(金)「相談員セミナーvol.5」開催決定!
6月24日の「三木啓子のハラスメント相談員セミナーvol.4」は大変ご好評でした。
実施後すぐに、多くの方から次回のセミナーのお問い合わせをいただきました。
次回のセミナーの開催が決定いたしました。ぜひご参加ください。
<三木啓子のハラスメント相談員セミナーvol.5>
●日時:2012年 1月27日(金) 12:30~16:30
●会場:大阪産業創造館 5階 研修室AB 大阪市中央区本町1-4-5
●講師:三木 啓子 (アトリエエム株式会社代表取締役 産業カウンセラー)
●参加対象:ハラスメント相談窓口担当者、人事・総務担当者、CSR担当者等
●参加費:9,000円(税込)
●定員:30人(先着順)
●主催:アトリエエム株式会社
自治体や大学でハラスメントの相談を受けて、行為者を処分したところ、行為者がその処分を不服として起こした裁判に対して、処分の取り消しを命じる判決が最近相次いで出ています。
1月27日(金)のセミナーでは、相談を受ける時の対応、メンタルヘルスの知識、行為者へのヒアリングのポイントなどについて、ロールプレイを交えて丁寧にお伝えいたします。
加えて、最近の判決にそって組織の防止対策などについても解説いたします。
先着順ですので、お申し込みはお早目にどうぞ。
また、6月24日の「三木啓子のハラスメント相談員セミナー vol.4」の模様が、7月8日の読売新聞(朝刊)に掲載されました。
「心の労災」というタイトルで、パワーハラスメントの現状と対策について取材された2日間の連載記事です。
HPにアップしていますので、ご覧ください。
「三木啓子のハラスメント相談員セミナー vol.5」のご案内はこちら>>>
読売新聞の記事をアップしている「新聞・ミニコミ」のページはこちら>>>
「ここが知りたかった!ハラスメントQ&A」新発売!
大好評のアトリエエムのポケット冊子。「みんな、まじめに楽しく働きたい」「セクハラ・プリベント」は全国各地の企業、行政機関、教育機関、労働組合等でご活用いただいています。
多くの方からのご要望にお応えして、今回はQ&Aスタイルのポケット冊子を作成しました。
「パワハラ」「セクハラ」「対応と防止対策」と3つの章で構成。
基礎知識から組織の防止対策まで、今、皆さまが最も知りたい疑問を10問厳選して、三木啓子が明確にお答えしています。
すでに1,500冊のご予約をいただいています。
経営者・管理職から従業員まで、一人に1冊、ハラスメントのない豊かな職場環境をつくるためにぜひご活用ください。
<Q&Aより>
Q2.厳しい指導はパワハラになるのですか?
Q5.セクハラになる場合とならない場合があるのですか?
Q9.メンタルヘルスの問題はパワハラと関係がありますか?
Q10.ハラスメントのない職場にするためにはどうすればよいですか?
ポケット冊子の詳細はこちら>>>
また、日経ウーマンオンラインにわかりやすい「実例で見るセクハラ・パワハラの基礎知識」を短期連載しています。(2011年6月30日~)ご覧ください。
日経ウーマンオンラインはこちら>>>